しばしば、薬を使わずに精神療法だけでうつ病を治療してほしいという要望を受けます。しかし、特別な場合を除いてうつ病の急性期では、薬物治療の優先を原則とするという話をして、薬物治療をなるべく受け入れていただくようにしています。もちろん、精神療法的なアプローチも必要ですが、特に初回の面接では患者さんの私的な事情や心の中に深く関与するようなことは避けるのが普通です。なぜなら、感情を深く掘り下げていきますと、意識下にあるいろいろな葛藤が現れて、かえって不安が強くなる危険性があるからです。
禁煙パニック発作
では、うつ病の精神療法とはどのようなものかといいますと、病気や症状、その経過の説明、服薬の必要性、薬の副作用の説明などをして、うつ病という病気をよく理解していただき、不安を軽減するといったごく当たり前のことなのです。それから、相談にのったり、助言したり、休息を促したりといったことで、環境への適応の改善を図るというようなことも大切です。治療開始時点では、私的なことにはあまり触れないようにするといいましたが、患者さんがそのことを自発的に話されるような場合は、治療者が共感をもって話を聞くということはもちろん大切なことです。このような話では、少し頼りないと思われるかもしれませんが、実際に十 分な効果があります。
うつ病のセルフテスト
うつ病の治療で、精神療法が中心的になるのは、うつ病の程度が比較的軽度で、なおかつ、環境、役割の変化や喪失体験といったストレスの原因がはっきりしている場合です。例えば、喪失体験の後のさまざまな感情体験(悲哀の仕事)が完了されず、中途で止まっていることがうつ病の原因になっていると思われる場合があります。そのようなときには、カウンセリングなどによって「悲哀の仕事」を手助けする必要があります。本人にとって大変なことではありますが、長い時間をかけても喪失したことは事実として認め、これを受け入れていき、その上で、現実に即した新しい生活を模索していくことが大切なのです。
上部中央背中の痛み
それから、性格の偏りや未熟さがうつ病に影響を与えていると思われるとき、軽度のうつ病が長く続くようなとき(気分変調症)、あるいは、うつ病がある程度改善した後におっくうな感じが残ったり、生きがいや興味が感じられないといった状態が長い期間にわたって持続するようなときにも精神療法が重要となる場合があります。
そのようなときには、認知療法、行動療法的なアプローチは、有効な手段としてしばしば用いられます。認知療法では、ある状況で自然に起こってくる思考やイメージ(自動思考)を通して、自分の心のクセや思考のパターンを知ることからはじめます。そのことによって、憂うつな気分の原因である非適応的思考やマイナス思考から抜け出し、気分の改善を図ることを目標とします。
行動療法的なアプローチでは、ある程度、意欲、活動性が回復した段階で、散歩、レクリエーション、趣味などへ患者さんを導いていきます。そして、行動することによって面白いという「快」の感覚が自然に生じてくるという事実に気づくようにします。そのことによって、さらに活動性を回復させ、行動から生じる「快」の感覚が物事に対する興味、喜びの改善につながっていくようにします。
以上、思いつくままに述べてみましたが、大切なことは一つの治療法に固執することなく、うつ病になった原因、状況あるいは、うつ病の回復の段階などを考慮して、それぞれのケースに適切なものを柔軟に用いることです。
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