クローン病
メトロニダゾール(フラジール等)
メトロニダゾール(商品名:フラジールほか)は寄生虫の一種であるトリコモナス虫による感染症に治療の「抗寄生虫剤」です。内服すると、寄生虫への影響だけでなく、免疫系にも何らかの作用を波及させると考えられています。
トリコモナスとは鞭毛(尾のようなもの)を持った微小寄生虫です。トリコモナスには数種類が存在します。その多くは動物の消化管に寄生しますが、種類によっては生殖器系や泌尿器系に寄生します。その代表的なものが、膣もしくは男性尿道及び前立腺に感染するトリコモナス(症、膣炎等)です。また消化管に寄生し継続的に下痢の原因となる種も存在します。
フラジールの薬理作用はトリコモナス(Trichomonas vaginalis)に対し、抗原虫作用をあらわします。
その作用機序は非常にユニークで、ニトロ基が微生物により還元され、それが微生物のDNAの二重鎖切断等の機能障害を起こし、分裂増殖を抑制するためと考えられています!
上記の様に、同剤は抗原虫作用に加えて、免疫調節作用を期待して、1975年以降徐々にクローン病治療に用いられるようになりました。
フラジール適応のケースは、大腸病変を有するクローン病で、サラゾピリンが効かない、もしくは適用不可のケースに有効とされ、特にクローン病による肛門病変(痔瘻)を有する際に良く用いられます。
フラジールは主に肝臓で代謝されます。
副作用としては、長期服用で、WBC・PLT減少、四肢のしびれやめまいなどの中枢神経系症状が出ることがあります。また服用中にアルコール摂取するとアルコールの代謝過程においてアルデヒド脱水素酵素を阻害し、血中アセトアルデヒド濃度を上昇させる為、腹部疝痛、嘔吐、顔面潮紅があらわれることがあるので、投与期間中は飲酒を避けます。 また、消化器系の副作用として舌苔、食欲不振、悪心、胃不快感、下痢が起こるケースがあります。
◆痔瘻の治療の場合
クローン病特有の痔瘻で炎症が少なく、分泌物が少ない場合はフラジール750mg/日、またはスペクトルの広い抗生剤投与で改善することがあります。
●メトロニダゾールの副作用(以下引用文)
約50%の症例に中枢神経系障害や末梢神経障害などの副作用が見られると報告されています。
◇メトロニダゾールによる末梢神経障害
メトロニダゾールの大量投与により、末梢神経障害が発現したとする症例が報告されました。外国においても神経障害が発現した症例が報告されています。
いずれの外国症例も日本では適応症として認められていないクローン病等に長期間大量投与された症例です。
<<症例(外国文献>>
[年齢・性]
男性
[原疾患]
クローン病(長期にわたる病歴があり、断続的にサラゾピリンとプレドニゾロンで加療。日本では適応症として承認されていない⇒保険適用外)
[被疑薬]
メトロニダゾール 最初5日間1日 2,400mg、その後1日 1,200mg投与
[副作用]
メトロニダゾール投与開始8週後に足の熱感に気づき、6ヵ月後に末梢の錯感覚が発現。投与開始9ヵ月後の検査で、遠位の痛覚減退と感覚減退がみられ、軽微な痛覚過敏。電気生理学的研究で遠位の主として知覚神経の軸索性ニューロパチーを示す所見。腓腹神経生検で多数の有髄神経線維の喪失と軸索突起の変性があり、有髄神経線維の数は2,230/mm2(正常>6,000mm2)と減少。いくつかの有髄神経線維群では軸索突起の再生像も。
[転帰]
メトロニダゾール投与中止後7ヵ月で回復
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メトロニダゾールによるピロリ除菌
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短腸症候群
一般的に小腸の広範な切除によって、残存小腸が1m以下となり、実効吸収面積が顕著に減少すろことで、消化吸収障害を引き起こすことです。
通常5〜7mあるところが1m以下になると当然障害が発生します。
一般的には回腸でビタミンB12、水酸化ビタミンD、胆汁酸を吸収する為、回腸切除の方が空腸切除よりも代謝障害を受け易いとされています。
吸収することができなかった胆汁酸が大腸に流入することで下痢となります。
また、残存(長)が充分であっても、病変の進行等でその部分が「機能」していなければ、同様な障害を引き起こします。
潰瘍性大腸炎と異なり、クローン病では小腸も含め、口から肛門に至る全ての消化器系が病変発現の対象となり、小腸が好発部位の一つであり、小腸切除後や小腸病変の多いケースでは注意が必要となります。
短腸症候群が顕著な場合は経口摂取を控え(絶食)、高カロリー輸液の「中心静脈栄養」(IVH)を実施します。在宅では「在宅中心静脈栄養」(HPN:Home Parenteral Nutrition)もしくは「在宅IVH」(通称の一つ)を行います。
バービーと食欲不振
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胃瘻(PEG)
胃瘻とは腹部に設ける「小さな口」です。
脳血管障害等の後遺症やクローン病や癌の術後障害に経口的栄養摂取が困難になった場合、高カロリー輸液の「中心静脈栄養」(IVH)でもなく成分栄養剤の「経鼻チューブ」(経管栄養:狭義)でもなく、腹部に造設した栓(PEG)="第二の口"から栄養補給を行う栄養療法です。
経鼻チューブのような違和感がなく、ADL(日常生活動作)の向上を目論見ます。
Percutaneous(経皮)/ Endoscopic(内視鏡的) /Gastrostomy(胃瘻造設術)の頭文字を取っています。
必要な栄養を自発的に摂取できない方に有効とされます。
・脳血管障害や痴呆などの自発的な摂食意欲の障害
・嚥下機能の障害
・頭部や顔面の外傷による咀嚼・摂食障害
・上部消化管の病変による経口摂取障害
・クローン病のような長期の栄養補充が必要なIBD
・誤嚥による肺疾患の予防と治療
また特殊な例として、減圧目的の減圧ドレンとしての適応もあります。
次に禁忌・注意が必要なケースです。(一例)
・咽喉頭、食道、胃噴門部の狭窄
・胃手術の既往
・横隔膜ヘルニア
・過度の出血傾向
・そもそもの消化管吸収障害
PEGのカテには代表的な4種類があります。それぞれに特徴がありますので、事前に検討する事が必要です。
クローン病では「胃に穴をあけ、腹部に栓(キャップ)が付く!」と抵抗を感じる場合もありますが、経管経鼻栄養が苦手なケースやADL(日常生活動作)の向上には検討の価値があると思われます。
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骨髄幹細胞胃腸の炎症修復 医科歯科大、慶大チーム確認
●毎日新聞 2002.8.26
胃潰瘍(かいよう)など消化管の内壁に生じる炎症が、骨髄に含まれる幹細胞によって修復されることを、東京医科歯科大と慶応大の研究チームが初めて確認し、26日の米医学誌「ネイチャー・メディシン」電子版に発表した。骨髄移植を受けた白血病患者の胃などの内壁を調べて分かった。骨髄の幹細胞に消化管の内壁を再生する働きがあることを示しており、骨髄移植が、若い世代に多い潰瘍性大腸炎など消化器の難病治療に役立つ可能性が出てきた。研究チーム代表の渡辺守・東京医科歯科大教授(消化器内科)は「細胞が壊れたとき、骨髄幹細胞が修復に動員される様子が明らかになった。骨髄移植でなくても末梢血幹細胞の移植で同様の効果を期待できる。今後、潰瘍性大腸 炎やクローン病、ベーチェット病など難病の治療に生かしたい」と話している。)−抜粋−
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シートン法(セトン法)
クローン病の肛門病変は、多くが痔瘻で、慢性化し難治性となります。(肛門周囲膿瘍もあります)痔瘻の一次口は、肛門の潰瘍や裂肛から発生し、会陰皮膚に複数の二次口がみられます。複雑な病変を形成します。そこで溜まった膿みを継続的に排出するための方法がこの方法です。極めて簡素に感覚的に言いますと病変部にカテを挿管して、排膿を継続させ、それをオムツなどで受けるのです。具体的には、瘻管を確認し内面を攪拌)してから、瘻孔と肛門管、瘻孔と皮膚を軟らかい排膿ドレンをループ状に挿管し、結んで、留置します。ドレンは、瘻孔が複雑な形状であるほど、多く挿入されます。排膿(ドレナージ)を確実にし、経過観察とともに瘻管を漸減し、瘻孔の単純化を図ります。単純化すると1本ずつ抜去して、経� �観察します。安定していくと数ヶ月、1年でドレンは全て抜去されます。挿管時の、肛門部の違和感や排膿の不快感はメンタルへの負担も大きいです。また、不随意で排膿が続きますので、オムツやパンツ型オムツ、女性生理用ナプキンが常時必要です。ドレンが抜去されても「完治」ではありません。排膿により、座浴や清拭、オムツ交換が時間・場所に関わらず強いられます。
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医療
輸液フィルターと薬剤非吸着性ルート
「イントラ・・」等の脂肪乳剤の点滴をしてもらう機会がよくあります。
IVHの側管か三活から入れることが多いです。
その際、ルートに介在している「フィルター」の位置よりも刺入部寄りに接続し、脂肪乳剤がフィルターを通らないように 厳しくチェックして実施します。
また、医療機関によっては脂肪乳剤が流れる部分のルートを 通常のものから「非吸着性」のものに代えています。 なぜ、フィルターを通さないのか また、なぜ非吸着性のルートを使うのか少し調べてみました。
まずはフィルターです。
輸液フィルターの目的「輸液中に混入した細菌や微小異物、気泡等の除去、場合によっては配合変化で生じた微小沈殿物の除去、空気塞栓の防止等」です。IV useにおいては微生物の混入を防ぐことで感染症の予防をはかります。
下abdomanの痛みや硬さ
実際には、医療機関やスタッフによって基準が異なっている場合があり、「IVHの高カロリー輸液だけフィルターを通す」というケース、「気泡等の混入予防の為すべて通す」というケースもあります。一番多いの「高カロリー輸液だけフィルターを通し、抗生剤や 脂肪乳剤は、フィルターより刺入部寄りの体側に三方活栓を 付けてそこから注入」するケースです。
ではのこようにする理由は何でしょうか。
理由の一つは「フィルターの孔径 (0.2 μm) より粒子が大きい薬剤や フィルターに吸着する薬剤はフィルターを通さない」というspec.上の理由があります。
フィルターと輸液の関係については次のようなものがあります。
◆フィルター禁忌の輸液(一例)→〜0.2μmmpフィルターを通過しない輸液
・乳化剤・・脂肪乳剤(「イントラ・・」)ロピオン鎮痛薬、リプル血管拡張薬
・血液製剤・・アルブミン、グロブリン など
◆フィルター (輸液ボトル) に吸着してしまう輸液
インスリン、セルシン安定剤 など
◆フィルターを変性させるてしまう輸液
ラステット、ペプシド抗悪性腫瘍薬 など
◆(特に)フィルターを通すべき輸液
凍結乾燥製剤で製造過程あるいは溶解時に溶けきらない微小異物が含まれているもの
◆1.2μmのフィルターを使用すべき輸液
脂肪製剤は従来フィルターを通過しないので使用すべきでないとされてきました。0.2μmフィルターは通過しませんが1.0μm以上の脂肪粒子を除去する目的の1.2μm フィルターは使用可能です。1.2 μmフィルターでは沈殿物や脂肪凝集塊の除去比較的大きい微生物の除去が可能で静脈炎の防止をはかれます
◆投与量が少ない輸液
投与する輸液中の薬剤濃度が5μg/ml以下あるいは1日の総投与量が5 mg以下の場合のG-CSF製剤であるノイトロジンなどはフィルターの通過の可否が確認できてから使用する
◆使用時の注意事項
吸着を起こす薬剤やフィルターを変性させる薬剤の場合は刺入部側に近いフィルターより下流の側管からゴム栓に刺針しするかプラグで接続して注入する。また、脂肪乳剤を含んだ輸液は, 脂肪乳化剤用フィルター孔径1.2 μmを使用する。
以上がフィルターについてです。
脂肪乳剤自体の特性として、脂肪乳剤の添付文書に「他の薬剤と混合しない」と記載されており、『電解質輸液と脂肪乳剤を混ぜると、脂肪粒子の粗大化が認められる』とされています。脂肪乳剤は直径1〜2マイクロ程度で、血管内においては異物粒子で、混合して使用すると場合により5〜10マイクロ程度に増大する可能性があります。
次は「非吸着性ルート」です。
一般的に投与する薬剤側からの指定がされない限り多く使用されているmedical gradeのルートはポリ塩化ビニール(PVC)製のものです。潰れによる閉塞や引っ張りによる切断等に比較的強い柔軟性をもった医療素材です。その特性である柔軟性を保持する可塑剤がDEHP(フタル酸ジ-(2エチルヘキシル))です。重量比で約30〜40%配合されています。
このDEHPを含んだポリ塩化ビニール(PVC)製ルートで脂肪乳剤を静注すると、可塑剤であるDEHP(フタル酸ジ-(2エチルヘキシル))が輸液に溶出するとの報告があります。
DEHPの有害性に関しては、ラットもしくはマウスの動物実験で 肝毒性(発がん性等)、生殖発生毒性(胎児毒性 、催奇形性、精巣毒性、精巣小型化)が発現する内分泌撹乱物質であるとの疑いが濃厚となりました。
人体に対しては種の特異性を考慮して安全性評価を行った結果、発現する可能性は低いとされていますが、外因性内分泌撹乱化学物質の候補の一つとしてもあげられている等の理由から、製剤メーカーは脂肪乳剤の添付文書の自主改訂をおこない、安全性を考慮し、脂肪乳剤のルートとして非吸着ルートや非PVC製ルートを使用するようにしています。
2002年には厚生労働省から「新生児・乳幼児・妊婦等特定対象患者へのDEHP含有塩ビ製器具の使用回避」の旨、通知が出されました。
ルート本体以外にもフィルターセット、三活のチューブもPVC製のものがあり、これも同様です。一方、留置針や三活そのものがPVC製であるものは余りありません。
通知やメーカー自主変更に伴い、PVC以外に材質に代替可能なもので、投与薬剤の有効成分がルートに吸着しないものが要求される際にはポリブタジエン製への交換が進められています。
これにより、脂肪乳剤の点滴を行う際には、薬剤非吸着性の非PVC製のものを用いるようにしているのです。
DEHPよりも毒性が低い代替可塑剤として、トリメット酸トリ−2エチルヘキシル(TOTM)があります。
特に輸液ポンプ装着ルート等において、強度・耐久性といった物性総合機能で塩ビ以外に適切な材料が未確認なものについては、このTOTMへの変更が進められています。
TOTMは、動物実験においてDEHPと同投与量の場合に毒性評価が低く、DEHPに比べて血液や薬剤への溶出量が低く、更にmedical grade materialとして国内外で使用実績がある等、現時点ではDEHPより安全性に優れた、最適の塩ビ可塑剤とされています。
大手医療機器メーカーでは2003年1月から輸液セットのPVC部材をTOTM使用に切り替えています。
アルコールうつ病の問題
余談ですが、2003年11月、血液回路のチューブを初め全パーツのPVC部材にDEHPを使用しない心臓手術用の人工心肺システムが発売されました。
医療機器メーカー各社は、製造過程で塩化ビニルを柔軟化するために用いられる可塑剤をDEHPからTOTMへの切り替えを進めています。
ではIV・CV use、心肺システム(回路)以外はどうなっているでしょうか。
CD患者さんの多くが使っている経管経鼻(経腸)栄養療法のルート、そのフィーディング・チューブはどうでしょうか。
これも今まで書いてきたものと同様の動向になっています。
フィーディング・チューブ、EDカテーテル類は、非PVC製へと切り替えられ、ポリブタジエン、ポリエチレン、テフロン、ポリウレタン、ポリプロピレン、天然ゴム、シリコンゴム等に変わっています。
経腸・経口消化態栄養剤ラコールの製薬会社の添付文書にも「DEHP可塑剤を含まない栄養セット及びフィーディングチューブ等を使用することが望ましい(抜粋)」と記載されています。
ここで海外の動向です。
アメリカ食品医薬局(Food and Drug Admin. of U.S.)のデバイス・放射線衛生センター(CDHR)はアメリカ国家毒性計画(NTP)Human Reproduction評価センター(CERHR)が行ったDEHPに関する最終報告書(2000年10月)に基づき、medical gradeのPVC器具にフォーカスしてリスク評価を行っています。対象として、輸液用バッグ、輸液ルート、輸血用バッグ、輸血ルート、透析用チューブ、心臓バイパス機器チューブ、呼吸用チューブ、そして経管経鼻(経腸)栄養療法のルートのルート(フィーディング・チューブ)です。FDAではHEHPの人体に及ぼす影響について激しい討論が交わされたようです(動物の精巣毒性については認知されていました)。
以下、リスク評価の概要です。
1)TPN・・TPN施行下で脂質成分を投与するとルート等からDEHPが溶出し、暴露による健康への影響が懸念される
2)輸血・・交換輸血が行われる新生児と「輸血/膜型人工肺」(ECMO : Extracorporeal Membrane Oxygenator;急性呼吸不全の患者に対し人工換気を行う人工肺)時に輸血が行われる際にDEHP暴露による健康への影響が懸念される
3)経管経鼻(経腸)栄養療法(EN)・・「1)TPN」と同様にEN栄養剤の脂質によってDEHPが溶出し、健康への影響が懸念される
−−続く−−
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NSAIDs潰瘍
胃酸による自己消化による上部消化管の潰瘍性病変の一種で非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)に由来する上部消化管潰瘍。NSAIDs投与中の消化性潰瘍発現では、副作用の自覚症状が乏しく、吐血・下血、貧血症状の精査で発見されることが多い。NSAIDsは幅広く使用される内服薬である為、早期に潰瘍を発見することが治療において重要である。
原因
胃酸やペプシン等、粘膜に障害として機能する「攻撃因子」と、粘液や粘膜血流等、粘膜抵抗力を増強する「防御因子」とのアンバランスによって潰瘍が発生するという高名な学説が根本原理とした上で、NSAIDsにより胃・十二指腸粘膜が障害された結果、組織欠損を起こした状態である。機序としては@シクロオキシゲナーゼ阻害作用による粘膜障害、A直接的消化管粘膜細胞の障害、Bその他の説がある。
治療法
基本的には、薬物治療としてH2ブロッカーやプロトンポンプ・インヒビター(PPI)が使われる。また、NSAIDs潰瘍治療薬があり、プロスタグランジンE1誘導体、胃粘膜壁細胞におけるプロスタグランジンE型受容体と結合して、ヒスタミン受容体とアデニル酸シクラーゼとの連関を抑制し、胃酸分泌抑制作用を行い、更に粘膜防御機構を増強する。結果として「攻撃因子」抑制作用と「防御因子」増強作用の両面に作用することにより、抗潰瘍効果を示すと考えられている。
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GERD
gasro esophageal reflux disease(胃食道逆流症)
胃食道逆流性疾患(GORD)
食道炎:esophagitis(英語)、oesophagite(フランス語)
胃酸や胃の内容物が食道へ逆流して起こる食道粘膜障害疾患です。胃酸等の逆流で症状、組織障害のいずれか、両方起こるものを言います。近年、欧米で用いられている概念です。
胸やけ、嘔吐、つかえ感、胃内容物・消化液の口内逆流、胸骨後部痛、通過障害、出血等がみられ、高度な場合には、食事摂取そのものが困難になります。穿孔等の合併症がみられることもあります。内視鏡で食道に炎症や粘膜損傷が認められるもの、また自覚症状のみが認められるもの全てをGERDと呼びます。食道下部に明らかな病変部が確認される場合は逆流性食道炎と診断し、従来の逆流性食道炎だけでなく、おくび等の自覚症状があっても内視鏡で所見が認められない病態をも 含めます。非定型的な症状として、咽喉頭異和感、狭心症様の胸痛等が報告されています。
酸の逆流に関する機能は下部食道括約筋(LES)機能で、LES圧が正常で食後一過性に弛緩が起こるケースと持続的に圧が低下しているケースがあります。また、Ca拮抗剤、β遮断剤、硝酸剤等が圧を低下させます。
重要な合併症としてBarret食道があり、酸により食道内皮本来の扁平上皮が円柱上皮に置き変わることで食道腺癌のリスクが高まるとされています。
発生機序としては、1)逆流を防ぐ下部食道括約筋の働きの低下、2)胃排出能の低下、3)逆流したものを送り出す食道の働きの低下などが考えられています。
<治療>
就寝前の摂食を禁止し、胃・食道内圧勾配の減少ベッドの頭側挙上、酸(ペプシン)の中和・分泌抑制、下部食道括約筋(LES)圧低下作用因子の除去、胃・食道逆流防止メカニズムの増強を図ります。
薬物治療では、消化管運動機能改善薬、胃酸分泌抑制薬、食道粘膜保護剤が中心となります。
Non-ulcer Dyspepsia (NUD)
潰瘍の無い消化不良
Functional Dyspepsiaとも言い、「非器質的上腹部不定愁訴群」と考えらます。近年海外で使われるようになった概念です。
NUDの自覚症状による分類
1.胃・食道逆流型(reflux-like)
〜胸やけ、逆流感、げっぷ等
2.運動不全型(dysmotility-like)
〜腹部膨満感、食欲不振、悪心、嘔吐等
3.潰瘍症状型(ulcer-like)
〜夜間の痛み、空腹時の痛み、不快感、腹痛等
4.非特異型(non-specific)
〜上記の1〜3に該当しないケース
胃・食道など消化器運動異常には次のことが影響していると推測されています。
1.空腹時の前庭部収縮運動低下
2.食後の胃排出遅延(運動異常)
3.胃・食道逆流、十二指腸胃逆流の増
4.NO(Nitric Oxide)の減少による胃適応性弛緩(gastric adaptive relaxation)
とgastric receptive relaxation等の生理的反応欠如
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便潜血検査
便潜血検査は、主に消化管からの出血の検査として行われます。検査には化学的方法と免疫学的方法の二つがありますが、免疫学的方法が主流となりつつあるます。近年、高齢化や食生活の欧米化に伴い大腸癌のスクリーニング検査としても普及しています。
●化学的便潜血検査(オルトトリジン法・グアヤック法)
化学的便潜血検査が陽性の場合は、上・下部消化管の出血が疑われます(下表)。上部消化管の出血の場合、血液中のHbは、胃液や十二指腸液で変性し、さらに腸管粘液や細菌により分解・変性されます。化学的便潜血検査は変性Hbにも反応するので、消化管のどの部位での出血も検出される利点がありますが、その反面、食事や経口薬の影響を受け偽陽性・偽陰性となる場合もあり、食事や投薬の制限が必要です。一般的に検査前の3日間は食事制限をし、その後の便を検査するのがよいとされています。 食事制限は、野菜類は加熱処理すればほとんど影響がなくなります。生野菜も少量であれば問題ありません。肉・魚は煮焼きの加工をしても影響がありますが、白身の魚や鶏肉のささみは影響はほとんどありません。例えば寿司の1、2カン程度ならそれほど心配ないとされます。
表 便潜血検査(主に化学的方法)が陽性になる疾患(主なもの)
・鼻腔 鼻出血
・口腔 口腔内出血
・食道 食道動脈瘤、食道ガン、食道潰瘍
・胃 胃がん、胃潰瘍、胃炎
・小腸 十二指腸潰瘍、十二指腸炎、小腸腫瘍、小腸潰瘍、クローン病、メッケル憩室
・大腸 大腸がん、大腸ポリープ、潰瘍性大腸炎、クローン病、感染性大腸炎、薬剤性大腸炎、大腸憩室
・肛門 内・外痔核、痔瘻
・全身性 血液疾患(白血病、血友病、紫斑病、DIC)
●免疫学的便潜血検査(便Hb検査)
免疫学的便潜血検査は、ヒトHbに特異的に反応するため食事制限は必要はありません。しかし、変性したHbとは反応しないので、上部消化管(胃、十二指腸)の出血を確実にとらえることができません。従って下部消化管出血の検査として行われています。分析は定性法が広く行われていますが、近年では定量値測定が可能となり、定量値の濃度や連続性に着目することにより、疾患や病変の大きさの診断の目安となる、という報告もあり、定量値法は次第に普及してきています。
◆便潜血検査が陽性の場合は・・大腸癌以外の痔や大腸ポリープでも陽性になるので、直ちに、大腸癌を心配しなくてもよいと思われますが、精査(CFや注腸)を受けた方がよいとされています。
◆便潜血検査が陰性の場合は・・疾患から毎日出血しいつも便に血が混ざるとは限りません。結果が陰性であっても気になる場合は、精査(CFや注腸)を受けた方がよいとされています。
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